人権擁護法案に反対するには〜過激派に見るニセ科学の病理

作:久間知毅

 

訂正

 前の動画で「今回の法案」とつけましたが、正確には「平成17年」の間違いでした。(なお、現在「人権問題等調査会」などで話し合われている内容は、平成17年に凍結されて以来ほぼ変わらないとのことです)

 以上の点、この場を借りて謝罪いたします。

 

注意事項

 その場での説明に関わることが後ろで説明されている場所もありますので、コメントは、いったん最後まで見てからお願いします。また、前回私がアップロードした動画を一度見てから、この動画を見るようにしてください。「元動画参照」と書かれている場所がありますので。

 また、今回の動画に使用した文章が、原稿用紙140枚ほどありまして、前回の倍となっとります。同じ文字量にしてページ送り時間は半分になっておりますので、一時停止を推奨いたします。

 

謝辞

 人権問題等調査会で検討中の法案についての確認にて、自民党太田誠一議員事務所の方がお忙しい中も丁寧に対応してくださったこと、この場を借りてお礼申し上げます。

 

なお、私はこれまで太田議員とは何の係わり合いもなかったこと、この場で書いておきます。(でないと邪推する人が出てきそうなので。「工作員」とか)

 

 

 

先日の動画はたくさんのご意見ご感想、ありがとうございました。

さて、私事が一段落しましたので、質問等に対する回答動画を制作してみました。

動画に対するコメント、ブログへのコメント、他の動画の内容について書いてみようと思います。

と、早速はじめますが、議論の最初ですので、私の立場をもう一度宣言します。(前回でも書いたはずなのですが、私が賛成派だと誤解する人が多かったので)

私は、現状の法案には反対の立場ですが、もっとよい方向に修正が進んだら賛成も吝かではない、といった感じです。まぁ、要するに「法案慎重派」「条件付賛成派」と分類されるのでしょう。

とりあえず型どおりの挨拶はここまでにして、目次に入ります。

 

1.人権擁護法案に対する私の考え

2.人権擁護法案を巡る他反対派の意見

3.人権擁護法案に関する誤解とデマ

4.二分法による社会の単純化の問題(サヨク・ウヨクとニセ科学)

 

……という感じで進んでいきます。

 

 

 

1.人権擁護法案に対する私の考え

 

まずは、私がどのように人権擁護法案を考えているかということです。

一応のスタンツは説明しましたし、ザッと法案を読むのは前回の動画でやりましたので、特に問題点となる箇所をピックアップして、どう変更すればいいか、という方針で書いていこうと思います。

まずは第23条で、人権擁護委員の「委嘱の特例」にて、弁護士会の意見を聞くという部分。

 

(委嘱の特例)
第二十三条 人権委員会は、前条第二項に規定する市町村長が推薦した者以外に特に人権擁護委員として適任と認める者があるときは、同項から同条第五項までの規定にかかわらず、その者の住所地の属する市町村の長並びに当該市町村を包括する都道府県の区域内の弁護士会及び都道府県人権擁護委員連合会の意見を聴いて、その者に人権擁護委員を委嘱することができる。

 

前回も指摘しましたが、たがだか一私団体が、民意の代表者である市町村長の推薦の後段階で介入することに、私は疑問を感じます。よって、私が考える修正案は「弁護士会の文言を削除」することです。

 

2点目としまして、第22条23条における、人権擁護委員の国籍条項規定について。

……と、つまり、規定されてないことについてですが。

私は元の動画において、「特別救済措置に参加できないから外国人でも影響はあまりない」としましたが、実務面においてある考えが浮かびましたので、少し訂正を。

やはり、「人権侵害」とは、その地方の風土などの事情が関わってくると思うのです。その意味で、「果たして外国人が日本人の感性を理解できるのか」という問題が発生するような気がしたのです。実際、台湾に行った際に慣習の違いに驚いたり、東南アジアやアフリカの学生さんと話している際に、日本人との微妙な違いに感心したりすることがありまして……。

よって、第22条に国籍条項を追加するか、外国人に委嘱する場合は国会の承認を必要とさせるかにすればいいと思います。前者は今言ったとおりで、後者については「外国人としての立場での人権擁護委員という考えも、外国人差別という問題からアリといえばアリ」というもので、「国権の最高機関が、国家公務員法第96条〜第106条を守るような外国人だというお墨付きを与えたならば、例外として認めてもいいのではないか」という考えです。これに関しては、私自身も判断しかねるので、異論や改善案など、議論の余地があると思います。

 

3つ目の問題点は、マスコミ条項が凍結されている点です。

詳しくは元の動画より法案第42条第1項の第4号を参照ということになりますが、私は現在最も人権侵害を行っているのはマスコミであると考えています。某Aから始まる新聞社や某Tから始まる民放が今までどのようなことをしてきたか、この動画をご覧の皆様は十分理解しているものと思います。

そもそも、第42条第1項第4号に書いてあることなんて、人権だとかナントカいう以前に社会常識です。いくら加害少年だったとしても、それを裁くのは裁判所でありマスコミではありませんし、その家族に罪はないはずです。また、関係者に対する執拗な付きまとい行為は、どう見てもストーカーですよね。こういった一般常識を守らせるためにも、マスコミ条項は凍結すべきでないと考えています。

 

最後に、これもマスコミ関連ですが、「人権救済を申し立てた側にも守秘義務を持たせるべき」だと思います。

なぜこれがマスコミ関連かと言いますと、「人権救済申し立てをした!」とマスコミにリークして騒がれ、人権委員会が不開始事由(元動画参照)だと却下したとしても、いつもの「訂正は小さくベタ記事で」をやられたら、一般には「この人は人権侵害をした」と行政・司法を超えたつるし上げになるからです。これは、何もこの法案に限ったことではなくすでに行われている問題ではありますが、後に「気軽に相談」という点を考えますと、潰しておかないといけない芽だと私は感じます。

 

一応、私個人の考える修正箇所はこの辺りでしょうか。

この辺りが改善されれば、私はこの法案が非常に有用なものになると考えます。

それは、「いきなり裁判という最終手段をとらなくてもよくなる」というものです。これは、この法案が「新たな行政処分の権限を追加する」というものだからです。

行政処分とは、文字通り行政府が行う罰則です。交通違反したときに減点したり、食品の安全を守らなかった会社に営業停止命令を出したりする、アレです。行政処分について詳しくは、後に説明しますので、まずはお聞きください。

このように、司法に直接訴えるのではなく、行政府の準司法機関を使って柔軟に紛争を解決しよう、というものを「裁判外紛争解決」や「ADR(Alternative Dispute Resolution:オールタナティヴ・ディスピュート・レゾリューション)」といいます。詳しくは、ADRJapan(http://www.adr.gr.jp/)をご覧くださるといいのですが、実際問題、裁判というのは、訴える側も訴えられる側も非常に疲れるものです。なぜかというと、「推定無罪」の徹底がなされているとは言い難いからです。(裁判に巻き込まれる=社会的に死亡と、社会経験が豊富な方々がコメントしてくれました)そのため、司法との間にADRというクッションを置くことによって、様々な事例に柔軟に対処するわけです。

裁判には強制力がありますが、厳正な手続きが必要なため非常に非効率です。これが「疲れる」原因となり、今までのように「エセ人権団体」が「訴えるぞ」と脅すことによって一般人を封殺してきたわけです。(実際、裁判になった場合はエセ人権団体が負けることがままありますので、彼らとしては「訴えること」がカードとなっているわけです)

しかし、ADRは強制力があまりないかわりに、手続きが気軽に行えるという利点があります。こうすることによって、「裁判」という、費用もかかり訴えられているという社会的重圧を受けることに発展する前に、紛争の解決をはかるといったことが出来るわけですね。現状では、裁判前は当事者同士の話し合いになりますが、第三者……特に公的機関が間に入ったほうがスムーズに行きますし。

また、この問題に対する法務省や人権擁護局(法案成立後に人権委員会事務局に横滑りする部署)の見解で「エセ人権団体の不当な訴えこそが人権侵害である」としているので、手続き中の内容が非公開である(公開されると裁判と同じような「社会的に死亡」が待っているので)以上、この法案は、解同などのエセ人権団体への逆差別に対する特効薬足りうる、といえるでしょう。この辺りも私は期待しています。

また、国連の要請で「人権侵害に対処する独立性のある機関を作れ」(国内機構の地位に関する原則《パリ原則》や、人種差別撤廃条約などを根拠。詳しくは外務省HPの「人権外交」ページや法務省HPの「国内機構の地位に関する原則」を参照されたし)といわれていることもあります。その辺りも考慮して、現行憲法上(第90条の問題。後述)、最も独立性の高い組織(行政委員会)として、現状法務省の裁量として行われていることを明文化して組織を再編するという回答をすべきだろう、ということです。

ですが、現状で私はマスコミを信用していないので、出来れば上の4点、少なくともマスコミ関連の2点さえ改善されなければ、この法案に賛成することは出来ないです。

ともあれ、太田誠一議員事務所に直接問い合わせた結果、現在、法務部会や人権問題等調査会で修正をしている最中(ほぼ白紙からの議論に近い=大幅な修正を考慮に入れた)ですので、いい方向に議論が向かうことを祈るばかりです。

 

 

 

2.人権擁護法案を巡る他反対派の意見

 

続いて、私が「なるほど」と思った反対派の意見をご紹介します。反対運動の参考にしてくださることを期待しております。

 

 

反対論1.メディアは自由な取材をすべきであるから、マスコミ条項を削除するべき。

 

既存マスコミの自浄能力に期待する、という意味ならば、この反対論も意味をなします。私個人としましては、現状マスコミを信用できないので、むしろ規制すべきと思うのですが、この辺りは価値観の違いでしょう。まぁ、実際は凍結されているので、凍結解除しようとすると、もう一度国会を通すことになります。完全削除を目指す方以外は、現状の法案で賛成しても同じことだと思います。

 

 

反対論2.公務員はすべて日本人であるべきなので、人権擁護委員に外国人がなれる状態では賛成できない。

 

これに関しては、1でも指摘しましたが……確かに、公務員は全て自国民であるべき、という意見には納得のいくものがあるので、こちらに載せました。

実際、どうして外国人が「決定権を有しない公務員」になれるのかというのは、日本が先の大戦で敗戦したときに、その時点で自国民であって敗戦後他国民になった(朝鮮人や台湾人など)公務員がいたことが背景としてありまして……現在においては問題ないとする意見もアリといえばアリでしょう。(帰国事業はやりましたし、徴用でこられた方はごく少数であったこともあり、「強制連行でつれてこられたのに」という意見は通りませんのでご注意を。……この件に関しては他にたくさん資料あるので検索推奨)

 

 

反対論3.パリ原則や人種差別撤廃条約の要件を満たすのなら、刑務所を管轄する法務省の外局にそれを取り締まる委員会を設置するのはいかがなものか。内閣府の外局とさせるべきだ。事実、公正取引委員会も総務省から内閣府に変わっている。

 

行政委員会は非常に独立性の高い組織(とはいえ行政府の中ですが)ですし、私個人としては問題ないと思います。また、法務省に人権擁護局がある関係からも、業務の引継ぎ上法務省としたものと考えます。なお、人権委員会および人権擁護委員は、すでにある制度(法務省と人権擁護局、現行の人権擁護委員)を強化するという意味合いもあり、実績がないものを新たに作るというわけではないことをご理解ください。

それもそうですが、行政委員会に変わるわけですから、どこの外局になっても実務上問題はないような気がします。

公正取引委員会ですが、あれは橋本元総理の省庁再編時、元総理の方針で「内閣府には現場担当は置かない」という理由で総務省に移されたものと記憶しております。事実それ以前は総理府にあったわけですから、内閣府になったというのはただ単に「元の鞘に戻った」だけなのですがね。

ただ、それでも「同じ管轄だと誤解を受ける」などの理由で内閣府に所属させるべきだとするのなら、そう主張すればいいと思います。

 

 

反対論4.国連に何を言われたとしても、現行法や制度で対処できるし、新たな機関を設置せずともよいはず。

 

私自身、the United Nationsを「国際連合」と威厳あるような訳し方した人に不満を持っていますが、現状国連の言うことを無視するとどんな目に遭うか、アメリカ張りの国力を持っているならいざ知らず、他国との貿易で成り立つ我が国がその意向を無視していいのか、ということもありまして、整備すべきかなと感じているのですが。

また、現行法や制度で対処できるとしていますが、本当にそうであるかという問題もあります。特に、民事において警察は介入できません。民事に関しては民法第709条「不法行為」や付随する同法第723条「名誉毀損における原状回復」などを利用しているのですが、条文を読んでみると……。

 

民法(不法行為の一般的用件・効果)

第七〇九条 故意又ハ過失ニ因リテ他人ノ権利ヲ侵害シタル者ハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス。

 

この「不法行為」ですが、もちろん民事裁判で争わねばなりませんし、原告が被告の故意・過失を立証しなければならないという問題もありまして、容易に訴えることが出来ないわけです。また、被告に財力がないと、賠償請求も出来ないという問題まではらんでおります。というわけで、本当に救済してほしい人にとって十分だといえるのかという話です。(なお、逆差別をするエセ人権団体はそんなの関係なく「訴える」と脅すので、いちいちこんなこと考えません。彼らは「訴えると脅す」ことが手段なのです)

確かに一部の社会的弱者団体(=エセ人権団体)が利権化し、恫喝などの手段を用いて逆差別をする事例は事実ですが、それだけを論って不幸にも実際差別に苦しんでいる被害者の救済措置をなおざりにするのは、それも立派な差別ではないか、という疑問があるのです。……こう感じるのは、私の家庭事情や交友ある方々の周辺事情によるのかもしれませんが。ただ、「自分は生まれてこの方差別を見てこなかった」と嘯いても、それ自体が「この国において差別はない」ことの証明にはならないということです。標本分散は不偏標本分散よりも小さいですし、日本の総人口に対する一個人の経験が有意水準を満たすとは考えられません。

ともあれ、これは難しい問題なので、もっと議論すべきだと思いますが。

何度もいいますが、この法案にはまだ欠点があります。よって、より多くの議論をして、修正することをまず考えるべきです。その上で修正しきれないとき、または必要性すべてが棄却できるときにはじめて、廃案にするという選択肢が生まれるのです。

 

 

反対論5.冤罪の可能性をこれ以上増やすことはできない。もっと人権侵害の冤罪可能性を低くすべきである。また、冤罪ならばそれを周知させるようにするべきである。それらが解決されない限り、法案を通すべきではない。(時期尚早論)

 

強制的なものがなければ冤罪という言葉は出てこないので、これは「特別救済」の「勧告」に関することでしょう。一応こういう主張をなさる方は、「冤罪は人間が関わる以上なくすことが出来ない」という基本的なことを理解されている方なので、論理の破綻が起こりにくく、私としては好感を覚えています。

さて、この問題は痴漢冤罪にも繋がります。現在では痴漢冤罪の問題は周知のこととなりましたし、それに関する映画も作られるほど社会の関心は高くなりました。他にも、松本サリン事件での報道被害や冤罪など、現在の制度で起こった冤罪被害は数多くあります。

私のブログのコメント欄でも指摘されるとおり、冤罪の発生は「なにもわざと犠牲者を増やそうとして起こるものではない」のですから、それ全体を是正する……現状の国家賠償法に基づく訴訟だけでカヴァーできるのかが問題になります。実際問題、現行法(刑法とその関連法)で冤罪を作り出すには、若干の違法行為がなければ起こらないようなシステムなので、不当だと訴えたらまず間違いなく訴訟で勝利できるようになっていますが、その間に失った損失はどうなるでしょう。そのために、冤罪であったら、それを周知させる、きちんと謝罪することが、警察機構にしてもその他行政機関にしても出来ているのだろうか、ということです。私はまだ不十分だと思いますし、時期尚早論を展開する方々も同じでしょう。

ここから先は個人の価値観ですので、流してくだされば結構ですが、私は「冤罪に対する対策は他の法律も関わってくるので、この法案とは別に議論すべき」と考えます。よって、この法案如何に関わらず、議論していくべきだと思います。別に冤罪を容認するわけではなく、別に議論しましょうという考えです。実際、この法案での強制力ある措置は「勧告」の名前の公表のみですので、冤罪が起こったとしても刑法などより遥かに影響は小さくなっています。(さらに行政事件訴訟法、国家賠償法との兼ね合いから、人権擁護法案がまともに運用されたなら、冤罪の可能性はまずないと言っていい程度です)この冤罪可能性はもともと目を瞑っていい程度に小さい、と私は考えるのですが、これでもなおリスクと成果が不釣合いだというのなら、意見として十分通用します。(その代わり、どのくらいのバランスになればいいのか、ということを示さねばなりません。でないと、「ただ局所的なことをあげつらって引き伸ばしをしている」と思われてしまいます)

並列して処理するか、先に現状の問題を解決すべきかという問題ですので、どちらを優先するかは個人の考えです。廃案にする、または議論を凍結するという意味なら、この意見が一番説得力あるように思います。

 

 

反対論6.平成17年度の「人権侵犯事件」処理件数は約24000件、99%は法務局や人権擁護委員による「援助」「調整」「説示」等で解決、文書による「勧告」は2件、「告発」は1件しかありません。それでも足りないと言うのでしたら、現状の問題点を明確にした上で個別法を検討したら良いでしょう。(基本法構想論)

 

人権擁護法案とは別に、個別の案を出そうというものですね。明確にデータを提示し、それについて考えるという非常に説得力のある意見です。

ですが、現状の人権擁護局において行われる措置は法案で言うところの「一般救済」のみで「特別救済」が入っていないことや、平成18年度のデータ(法務省HPより)によれば、未済が803件(前年度からの持ち越しが703件なので、発生分は100件)あり、また民法第709条の「不法行為」や刑法第230条「名誉毀損罪」、同法第231条「侮辱罪」で対応している分も存在しているので、このデータを持って「十分足りている」というのはいかがなものか、とも思います。(あと、「気軽に相談する」というものにするわけでして、今まで泣き寝入りしていた懸案も入るため、実数はもっと増えると推察できます。いじめ問題が発覚せずに最悪のケースに至ったことは、昨年だけでも皆さんの記憶に数多く残っていることと思います)

次の、「個別法」ですが、その「個別法」が何を指しているものかわからないので、なんともいえないのですが、パリ原則等を満たし、現状の差別問題・逆差別問題を解決するのならば、対案として出すのは大いに結構でしょう。

ただ、これは「対案」が出されることが条件です。でないと、どちらがいいか比較できません。暗中で石を投げつけるのは卑怯な行為ですからね。

事実、平沼赳夫議員が会長をし、安倍前首相も参加している「真の人権問題を考える議員懇談会」は、対案となる「人権基本法構想」を唱えています。これは、まず「人権基本法」という大まかな枠組みの法律を決め、それぞれの人権案件について「個別法」を作るという構想です。

このように、非常に優れた構想であるのですが、問題はあくまで「構想」でしかなく、未だ「対案」として形になっていないことが上げられます。

基本法構想論を展開するには、まず対案を出すことが急務です。対案なしに議論は出来ません。私は、真の人権問題を考える議員懇談会が早めに対案を出すことを期待しています。

 

 

反対論7.この法案は人権擁護局を国連の要請を満たすために再編するだけの、毒にも薬にもならない物に見えますね。 人権擁護委員に三条委員会の管轄化であるという箔がつけば、調停などがスムーズに行く可能性もあるので、その辺は期待してもいいかも知れませんが。

 

反対論というか、中立論の意見ですが……まぁ、正直私とほとんど同じ意見ですね。

これはあってもなくてもいい、という感じです。私としましては、前述したパリ原則に関すること、新たな行政処分権限の創設という点で、利点はあると思いますが。

あと、これに類似する意見と共によく引き合いに出される「天下りがどうの」と言う方もいますが、大体「行政委員会」ですので法務省が人事に携わることはないのですがね……これに関してその心配をしだすと、全ての行政委員会に同じことが言えるわけでして、あまり説得力がないような気がします。(天下りという単語を使えば相手の道理が引っ込むと勘違いしている人が実際多いようですし)

ただ、「嫌なら裁判すればいい。ADRなんてどうでもいいものを作るな。コストの無駄だ」というのは、完全に価値観の違いですので、私も何もいえません。十分主張するに値すると思います。

 

 

他にも、きちんと法案や現行法、判例やシステムなどの問題によって、人権擁護法案に反対する方もたくさんいます。また、ネットをいろいろ見回ってみますと、私と同じような考えの方もいました。

本当に何度も言いますが、この法案はまだ議論の余地があります

このように、多種多様の考え方があり、それぞれに反対論を展開することによって、この法案を理論的に修正、または廃案にしていきましょう。それこそが有意義な議論となるはずです。

 

 

 

3.人権擁護法案に関する誤解とデマ

 

続いて、人権擁護法案に関する誤解とデマを考えていこうと思います。実際、反対論を展開する上で、誤読や誤解による批判は取り除かねばなりませんし、デマなんかは論外です。

健全な反対論のために、これらは除外せねばなりません。

さて、まずはよくある誤解についてです。

 

誤解1.(人権委員会委員長および委員が)人格が高潔で人権に関して高い識見を有する者だと誰が判断するのか。基準がない。

 

とりあえず、条文に噛み付いただけなのか、単純に法律によくあるパターンを知らないのか、のどちらかだと思いますが……

とりあえず、弁護士法の第2条をご覧ください。

 

弁護士法第二条

弁護士は、常に、深い教養の保持と高い品性の陶やに努め、法令及び法律事務に精通しなければならない。

 

……山口県光市の母子殺害事件に関する弁護士団を見て、この第2条の前の部分が「ただの枕詞」であることがわかると思います。「ドラえもん」がどうこうといったり、死刑反対を法廷に持ち込んだりして見苦しく被害者も加害者も苦しめるような人が、「高い品性と深い教養」を持っているとされるのです。ありえない話です。

また、国家公務員法でも同じような条文が。

 

国家公務員法

第五条 人事官は、人格が高潔で、民主的な統治組織と成績本位の原則による能率的な事務の処理に理解があり、且つ、人事行政に関し識見を有する年齢三十五年以上の者の中から両議院の同意を経て、内閣が、これを任命する。

 

人格が高潔、がきましたね。

法律では、こういう浮いた箇所は、ただ後ろの言葉を意味なく修飾するだけということがよくあるので、この「人格が高潔云々」は全く考える必要がない文言だということです。大体、運用する上では意味ないですしね、こんな言葉。

よって、これをもって法案は批判できないのです。

 

 

誤解2.1.人種「等」とは曖昧すぎるのではないか?

誤解2.2.人種「等」では、他の人権侵害は認めないのか?

 

この疑問は、法案第2条「定義」第5項をご覧いただければ解決すると思います。

 

人権擁護法案 第二条

 この法律において「人種等」とは、人種、民族、信条、性別、社会的身分、門地、障害、疾病又は性的指向をいう。

 

はい。人種「等」ではなく「人種等」です。このように、他の部分で書かれている内容を忘れて、目の前の語句に過剰反応する例が多々見受けられます。条文は、法案全体で考えるべきであり、その法案は他の法律や判例、ガイドラインなどを総合的に見てようやく判断できるものなのです。(要するに、他の法律や判例などの法律に準ずるものに書いてあったら、特に断りない限り条文に入れないという感じです)

また、法律というのは、どうも一般の文章とは違う癖がありまして普通に読むと誤解することがあるのです。「善意」と「悪意」などがいい例だと思われます。(法律において「善意」とは「事情を知らずに」という意味で、「悪意」とは「事情を知りつつも」という意味になります。盗品を購入したときに罪になるか、という問題で、皆様もよく耳にすると思います)

 

 

誤解3.第二条第一項には、人権侵害とは不当な差別を指すと書かれている。「不当な差別」と書くからには、何を以て不当とするのかを定義しなければならない。明確な定義無しには常に恣意的な拡大解釈の危険がついてまわる。また、不当か否かの判断に、主観が混じるのは避けられない。主観によって運用される法律があってよいはずがない。

第二条第一項から、中間の文言を取り去れば、「人権侵害とは人権を侵害する行為をいう」という定義に行きつく。人権侵害とは人権侵害だというような曖昧さがそのまま法律になるのは考えるだけで恐怖である。これは取り締まる側にとっては、気に入らない言論や活動を取り締まる絶好の手段となる。言論や表現活動は多いに萎縮してしまうだろう。

 

 

参考:第2条第1項

第二条 この法律において「人権侵害」とは、不当な差別、虐待その他の人権を侵害する行為をいう。

 

これはコメントでも散見された意見ですが、今回引用したのは櫻井よしこ女史のものです。

この動画をご覧の方は、彼女の見識の高さ、人柄、話の内容等に惹かれる方も多いと思います。私自身も彼女の著書を数多く持っており、彼女こそ真のジャーナリストの一人だと考えているほどです。

しかし、これに関して彼女の言い分は事実誤認が多く含まれると考えます。

まず、「不当な差別」の不当は主観であるといいますが、法律の世界においては「主観を基準とする」こともあり得るのです。例えば、警察官職務執行法の第2条「質問」において、

 

第二条

1 警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止させて質問することができる。

 

はい。ものすごく主観です。警察官が「コイツは怪しい」と思えばその時点で職務質問できるとされています。

また、「ストーカー行為等の規制に関する法律」第2条「定義」第1項第4号でも「著しい」という主観が入る文言が入っています。

 

ストーカー行為等の規制に関する法律

第二条 四 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。

 

これは、軽犯罪法第1条第5号などのたくさんの法律にも記されていますが、この「著しい」の判断基準は主観でしかありません。

というか、軽犯罪法の条文なんか、ほとんどが主観です。先ほど出てきた民法第709条の「不法行為」も、「他人の権利を侵害する」というきわめて抽象的なことしか書かれていません。

また、「『人権侵害とは人権を侵害する行為をいう』というのは曖昧だ」ということもいわれますが、これは刑法第230条「名誉毀損罪」、第231条「侮辱罪」、第249条「恐喝罪」にも同じことが言えます。

 

刑法第二三〇条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。

 

刑法第二三一条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処す。

 

刑法第二四九条 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

 

もし、「人権を侵害する行為が人権侵害」というものがダメだというなら、「人の名誉を毀損することが名誉毀損罪」「人を侮辱することが侮辱罪」「人を恐喝することが恐喝罪」というのもダメになります。

ですが考えてみてください。

現実に、刑法はきちんと運用されています。定義が曖昧……それどころか、再帰構造になってさえいる名誉毀損罪や侮辱罪、恐喝罪でさえ、きちんと運用されているのです。というか、これら刑法または民法(不法行為)の文言は、第2項第3項や他の条文で補完されている人権擁護法案よりよほど曖昧な書き方しています

もしここで、「人権」そのものの定義がなされていない、という反論をしたとしても、実は成り立ちません。

それは、日本国憲法第11条〜第40条にかけて、「基本的人権」を定めているからです。憲法は国の最高法規であり、当然ながらこの人権擁護法案にも、憲法第11条〜第40条の「基本的人権」が適用されます。憲法に規定されている「人権」が曖昧だというかもしれませんが、ここから先は後述する社会通念がそれを補完するので、問題ないことになります。(何度も言いますが、法律はそれ単体では機能しません)

……第一、主観がダメなら、裁判で「懲役6年」とか、どうやって決めているのでしょうか。

法律では、懲役なら何年から何年。罰金ならいくらからいくらと決められていますが、具体的な年数や金額は決められていません。また、「情状酌量」なんてものもあります。これらを総合的に判断するのが裁判官です。決して、「彼は泣いて謝っているから4割ほど反省していると法律に書かれている。だから最大年限10年の6割で懲役6年」とは考えていないのです。だいたい、何をしたからそれが明確にどのくらいの減刑になるかなんて、どうやって法文に書けばいいのでしょうか。また、書けたとしても、その行為を利用して減刑を狙う輩が、確実に出てくるものです。

要するに、刑が確定するのは裁判官の裁量……最終的には裁判官の主観ということになります。

これはよく考えれば当たり前ですが、一般的な法律の「きっちりと定義して、それに基づいて判断している」というイメージとは違うのかもしれません。よって、法律とは曖昧さなく完璧に答えてくれるという思い込みから、この項目を批判する人がいるのかもしれません。

以上により、「主観によって運用される法律があってはならない」というのは、はっきり言って無茶としか言いようがありません。

法律とは、その担当官(刑法なら裁判官)の運用で、どう効能があるかが決まります。

人権擁護法案では、担当する人権委員会がどのように運用するのか、ということが問題で、法文が曖昧だという問題にはならないのです。なお、運用の方は後から説明するので、今は「主観と曖昧さ」だけ話させていただきます。

もし櫻井女史の言うように、「人権侵害とは人権侵害だというような曖昧さがそのまま法律になるのは考えるだけで恐怖である」のならば、この社会はすでに恐怖社会となっていなければ説明がつかないのです。先ほどいいましたように、「名誉毀損とは名誉を毀損すること」で「侮辱とは人を侮辱すること」で「恐喝とは人を恐喝すること」なのですから。

では、どうしてこのような……まして強制力の強い刑法でさえ曖昧なままの法律で上手く運用できているのか。運用者そのものに関しては後で説明するので、制度的なものを言いますと、法律の曖昧さはこれまでの裁判所による判決(判例)や社会常識(通念)が補完するからです。社会通念に関しては、中学の公民の授業で「クーラー使用は基本的人権なのか?」などの事例を使ってやったと思われます。

また、これは保険ですが、法務省はそういった「拡大解釈の懸念」に対して「人権侵害とは民事上の不法行為と刑法に触れる事案をいう」と指針を示しています。このことより、それ以上の範囲に「人権侵害」が拡大解釈されることはないということになります。

もし、これ以上拡大解釈されたならば、それは「拡大解釈である!」と行政事件訴訟法第二章により抗告すれば勝てます(指針に違反したので)。後に説明する運用の問題を除けば、拡大解釈される心配はないに等しいわけです。仮に拡大解釈されたとしても、その処分を覆すことができるわけですね。どうしてこんなややこしい書き方をするのか、ということになりますが……どうしてでしょうね。行政の癖、ともいえるかもしれません。理学で言うところの「電場」を工学では「電界」というみたいに、ただの業界内で通用する常識みたいなもので。

ともあれこのように、その法案に付随する指針や内部規定、関連する裁判の判例および現行法がこの法案を縛るわけです。法律はそれ単体では意味を成さないとは、こういうことです。

ちなみに、私が元動画で「きちんと定義されている」と書いたのは、「法律としてきちんと定義すべきところはされている」という意味で、日常的な文章とはまた別の意味合いになります。誤解を受けた方には、この場を借りて謝罪いたします。

櫻井女史は他にも、「人権委員会」と「人権擁護委員」を混同していたり(人権擁護委員『会』などの発言)、「一般救済」と「特別救済」も混同して発言したり(人権擁護委員「会」が立ち入り調査をする)など、あまりこの法案を読んでいないか、下調べが足りなかったかだったのではないかと思います。櫻井女史は人を騙してプロパガンダを流すような人ではありませんし、彼女の誤解はすべて法案の内容に準拠した誤解(?)であるので、おそらく対韓対中の言論のために時間がなく、法案について細部まで調べ切れなかったことがこれらの原因だと推察します。(そういえば、共謀罪のときも同じような論調でしたね。最近、本当にどうしたのでしょうか)

「櫻井さんの言うことだから」と信じていた方は、人間誰しも間違いがあるという前提を忘れることのないようにお願いいたします。(なお、これは私の言葉自体にも言えることなので、きちんと自分で考えて結論を出すようにお願いします)

 

 

・法案によると侮辱や嫌がらせも人権侵害と見倣される。だがこれらは人間の心、感情の領域の問題だ。そうした事柄を法律によって人権侵害だと断じることは出来るのか。心の問題を明確に切り出して法の前で断ずることなど神ならぬ身の人間が行ってはならないことだ。

 

再び櫻井女史の意見です。彼女には本当に申し訳ありませんが、コメントにある事実誤認による反論のかなりの部分をまとめると、櫻井女史の意見になってしまうので、今回は多用させていただきます。

さて、これですが。……なんと言いますか、「『侮辱罪』とか『名誉毀損罪』のことをすっかり忘れてませんか?」としか言えないのですが……。あれこそ、典型的な「心や感情の問題に法律が立ち入る」ことなのではないのかと。

さらに人権擁護法案は、司法の管轄ではなく行政の管轄です。より立ち入る範囲は狭くなるはずなのですが……。彼女はどんな罵詈雑言を言われても、人権侵害とは思わないのでしょうか? (もっとも、櫻井女史の場合、誹謗中傷したら言った側が論破されそうですがw)

そもそも、この法案で規制するのは「人権侵害」であって、「心」ではないのです。「人権侵害」という行為を以って規制するので、現行の刑法となんら変わりはありません。

いつも冷静沈着な櫻井女史ですが、このときばかりは頭に血が上っていたのでしょうか。私には、これが本当に彼女の口から発せられたものとは到底思えませんでした。

 

 

誤解4.人権委員にも人権擁護委員にも、国籍の規定がないのだ。

 

同じく、櫻井女史のものです。

元動画を見てくださった方、そしてこれまで見てくださった方には、「公務員に関する基本原則」または「当然の法理」により、公権力の行使または国家意思の形成への参画にたずさわる公務員である『人権委員会』には国籍の規定があることはお分かりになったと思います。

何度もいいますが、法律とはそれ単体を読んだだけでは全体像を掴むことができません。それに付随することも、法を運用する上で関わってくるのです。

人権擁護委員につきましては、私も若干疑問を感じるところがある、というのは、前述したとおりです。

 

 

誤解5.人権委員会は三権のどれからも独立した団体である。

 

人権委員会は法務省の下に置かれる行政委員会です。

……そうです。人事権を内閣総理大臣が握っている、れっきとした行政府です。というか、日本国憲法第90条によって、内閣の統制下におかれない「三権から独立した組織」は会計検査院のみになっているのですがね(とはいえ名目は行政府ですが)。まぁ、この法案と憲法が関わってくるなんて普通思わないので、見落としても仕方ありませんが。

 

 

誤解6.肝心の人権侵害かどうかの判断をする委員会が法務省内にあることから、政府の人権侵害に対して甘くなるのではないか?

 

これも、国家行政組織法によって独立性を担保された「行政委員会」である(元動画参照)ので、杞憂だと判断できます。人権委員会の委員長と委員は、禁錮以上の刑に処せられたときや人権委員会にあるまじき非行を行ったとき、職務遂行が困難な状況になったときに内閣総理大臣から罷免される以外はやめさせることは出来ないようになります。(両院の事後承認は例外なので言及しない)

このことから、正常に職務を遂行するために「政府から」圧力がかかることは、制度上ないことになります。

 

 

誤解7.諸々の現行法で対処できないことは皆無です。

 

民事に警察は介入できません。

民法第709条「不法行為」は、原告側が証拠を提示せねばなりません。しかも裁判です。

この法案は、対処することもそうですが、大きな目的は「パリ原則等に則った人権救済機関を作ること」と、「ADRを用いた窓口を増やし、泣き寝入りを防いだり、エセ人権団体の横暴を抑制すること」にあります。

泣き寝入りしている人が現実にいる以上、「皆無」などとは言えないはずです。

あと、誤解しているようですが、この「人権擁護法案」は現行の「人権擁護委員法」の改正とみてよかったりします(附則にて、「人権擁護委員法の廃止」が盛り込まれているため)。

 

 

誤解8.日本が一番差別のない国なのだから、人権に関する法律など必要でない。

 

その論理が成り立つなら、「日本が一番環境に対する意識が強い(メーカー的な意味で)のだから、工業での環境規制は必要でない」というものが成り立ちますが?

差別が他と比べて少ないことと、法律を整備することは全く別の次元の問題です。

 

 

誤解9.パリ原則を守るだけなら、「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」の改正で良いのでは?

 

パリ原則のみがこの法案の生まれた根拠ではありません他の国際条約や現在の社会状況、エセ人権団体の不当な訴えに対する行政処分の創設なども目的なのです。

国際的なところを話すなら、人権擁護法案における「人権侵害」救済の対象に「人種」が含まれている分、パリ原則よりもむしろ人種差別禁止条約の方が大きな影響を与えているといえるかもしれません。

 

 

誤解10.人権擁護委員会の委員長と委員は、禁錮以上の刑等に処せられない限り罷免されない。これは実質だれにも罷免されないことになる。

 

えー、これの前の説明で、この論のおかしいところはわかると思います。(この誤解を見たときは本気で焦りました)

禁錮以上の刑に処せられたとき等」です。「等」の場所が違います。

まぁ、法律において「等」を見落としたり、意味を取り違えたりすることはよくあるので、改めて考えるとありがちなミスだと思います。

 

 

誤解11.人権委員会の役員と人権擁護委員が国家公務員になるなど、法案中に書いていない。

 

直接は書いていません。ですが、人権委員会委員長および委員は特別職の国家公務員、人権擁護委員と人権調整委員は一般職の国家公務員になるとされます。

なぜなら、法案の第9条「総理大臣の任命」や第22条「人権委員会の嘱託」という条文が「公務員にする」という意味になるからです。これは、私の解釈ではなく、法務省が出した見解ですので、間違いないです。(行政の癖で、アウトラインで示して法案に書かない、ということがよくある)

さらに、人権委員会の役員ですが、法案附則第4条にて「特別職の職員の給与に関する法律」に「人権委員会委員長および委員」を加えることになっているので、こちらとしても証明できるでしょう。

なお、「どうして人権委員会が特別職なのか?」という問いに対しては、国家公務員法第2条第3項第9号にそう規定されているからです。

 

国家公務員法

第二条 3 特別職は、次に掲げる職員の職とする。

 九 就任について選挙によることを必要とし、あるいは国会の両院又は一院の決議又は同意によることを必要とする職員

 

……ということで、国家公務員法の縛りを受けない(同法同条第4項)から、人権擁護法案の中で人権委員会については縛りがつけられているのです。

 

 

誤解12.人権委員会はわずか5人。これだけで最大2万人の人権擁護委員を統制できるのか。

 

やはり、まず既存の組織に類似例がないか見てみます。よく引き合いに出していますが、同じ行政委員会の「公正取引委員会」を見てみましょう。

 

私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)

第二十九条 公正取引委員会は、委員長及び委員四人を以て、これを組織する。

 

……お分かりいただけたでしょうか。

公正取引委員会は、委員長と委員の計5人で運営されています。

同じように人事院では、人事院総裁と人事官2人の計3人。国家公安委員会は、委員長と委員5人の計6人。公安審査委員会は、委員長と委員5人、委員補佐3人の計10人(但し、全員非常勤)です。

常識的に考えて、こんな少人数でこれらのことが出来るなんて、行政委員会の中の人は、どれだけスーパースキルを持っているんでしょうか?

……という冗談はさておき、こんな少人数でシステムが回っているのには理由があります。

それは、下部にそれぞれ事務局を置いているからで、人権委員会の場合、現行の人権擁護局がそのまま事務局に横滑りします。同時に行政委員会になるので、政府の持っていた人事権が離れて、人権委員会が変わりにこれを受け持ちます。

横滑りですので、全く新しい機関を作るわけではなく、人件費が増大することはありませんので、この辺りも安心です。(但し移動するときの経費くらいはかかるかもしれませんがw)

 

誤解13.人権擁護委員には細かい規定がないから危険である。

 

細かい規定が何を指すのかにもよりますが、内部規定的な記述は法案第22条にあります。人権擁護委員はすでに「人権擁護委員法」によって存在している団体ですので、この法律との相違点を持って細かいと判断している、と考えるのが妥当でしょう。

人権擁護委員法における規定は、第6条に書かれています。人権擁護委員法第6条と人権擁護法案第22条は、「法務大臣」が「人権委員会」に変わっているくらいで、ほとんど記述の差がありませんが、ただ一点違うものがあります。

それが、人権擁護委員法第6条第6項です。

 

人権擁護委員法 第六条

 6 人権擁護委員の推薦及び委嘱に当つては、すべての国民は、平等に取り扱われ、人種、信条、性別、社会的身分、門地又は第七条第一項第四号に規定する場合を除く外、政治的意見若しくは政治的所属関係によつて差別されてはならない。

 

確かに、人権擁護法案の第22条に、このような文は入っていません。じゃあ、政治活動が出来るじゃないか! ……ってなるように思いますが、現行法の人権擁護委員は公務員ではないことを考えると、合点がいくと思います。それは全く同じような規定が、公務員法にあるからです。

 

国家公務員法 (平等取扱の原則)

第二十七条 すべて国民は、この法律の適用について、平等に取り扱われ、人種、信条、性別、社会的身分、門地又は第三十八条第五号に規定する場合を除くの外政治的意見若しくは政治的所属関係によって差別されてはならない。

 

また、国家公務員法第7節(第96条〜第106条)により、政治活動の禁止等が定められています。

 

 

誤解14.人権擁護委員を2万人も公務員にするのはコストの無駄である。

 

まず、「2万人も」と指摘しているようですが、条文では「2万人を超えない範囲」となっています。現状では1万4000人です。

さてコストですが、何を持って「コスト」と言っているのかによるのですが、他の意見や友人の誤解等々を総合的に判断しますと、「人権擁護委員に支払われる給料」という意味なのでしょう。

さて、結論から言ってしまいますと、人権擁護委員を国家公務員にしたところで、人権擁護委員に支払われるお金は、業務に必要な経費のみとなっております。つまり、現状とあまり変わらないわけです。

ここで疑問に感じた方がいると思います。

「公務員なのに給料が出ないのか?」と。そして、「給料が出ないと、他に働かないとお金を稼げない→公務員の兼職になる」という意見になりまして、「コストが変わらないのだったら、公務員が兼職していることになる! 国家公務員法第101条第1項の違反だ!」と言い始めるのかも知れません。(実際これを根拠にしている意見もありました)

 

国家公務員法

第一〇一条 職員は、法律又は命令の定める場合を除いては、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、政府がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。職員は、法律又は命令の定める場合を除いては、官職を兼ねてはならない。職員は、官職を兼ねる場合においても、それに対して給与を受けてはならない。

 

が、ここで重大な思い違いが発生しています。

そもそも、公務員は職業ではありません。公務員とは、それ単体で身分を表すのです。

念のため友人に聞いてみたところ、やはり「公務員=職業」だと思っておりました。どうやら、よくある誤解のようです。この場合の「職業」とは、「○○省職員」などが該当します。そのことを頭に入れて、もう一度条文を見てください。

「職員は」と書かれています。つまり「公務員であっても職員でなければ兼職可能」ということです。

これで、人権擁護委員が無給である理由がご理解いただけたと思われます。人権擁護委員が公務員となるというのは、無報酬の非常勤一般職国家公務員になるということだったのです。

ちなみに、同じような無報酬で兼職する公務員が身近にいることをご存知でしょうか。それは、「消防団員」です。彼らは「地方公務員法」と「消防組織法」による、非常勤の特別職地方公務員なのです。他にも、「保護司法」によって犯罪や非行に陥った人の更生を支援する非常勤国家公務員として、「保護司」というものもあります。

実は、こういった公務員の形態はすでに社会に浸透しているのです。

 

 

誤解15.「人権擁護委員委嘱の団体条項の削除」がなされたからと言って、エセ人権団体が入り込む可能性はある。

 

じゃあ、どうすればいいのでしょうか。

「エセ人権団体が100%入らないようにする法律」なるものがあったらこちらが見てみたいですよ。「人権擁護の団体に所属する者はこれを認めない」などにするのでしょうか。ですが、これでは範囲が広すぎて対象とすべき人を除外することになりかねません。では直接「部落解放同盟」と名前を書くか、という話ですが、これは名前を一文字でも変えれば対象から外れるので、結局エセ人権団体を選別するのは不可能です。

ここでは、「そういう人」が人権擁護委員にならないよう、任命する総理大臣や認証する国会がまっとうな判断を行うことに期待するほかありません。この問題も、後に運用で説明いたします。

ただ、この問題以外にもいえることですが、「予見される可能性」のみで反対論をこねても説得力が出ないのです。過去に何が起きたということではなく(情勢の変化およびこの法案の内容とは違うことがあるので)、この法案を「その手の団体」が悪用すると予測しうる合理的論拠が必要なのです。でないと、「陰謀論」の域を出ることはないでしょう。

 

 

誤解16.人権擁護委員が令状なく家宅捜索や資料押収に来る。それを拒否すると罰金30万円を科される。警察官でもない人権委員会がこれを行うのは三権分立からみても違憲ではないか?

 

この文章には、誤解が4点含まれます。

まず、人権擁護委員は立ち入り調査を含む「特別救済手続」に参加できないこと。

 

(一般救済)

第四十一条 2  人権委員会は、委員、事務局の職員又は人権擁護委員に、前項第一号から第四号までに規定する措置を講じさせることができる。

 

(特別救済)

第四十四条 2  人権委員会は、委員又は事務局の職員に、前項の処分を行わせることができる。

 

法律は、条文やその他法律等に書いていないことはできません。曖昧なものも、曖昧なように書いています。それは、先ほどの「法律特有の抽象的表現」のところで説明したとおりです。

人権擁護委員は、現行法の「人権擁護委員法」による救済措置とほとんど変わることのない「一般救済」のみ関わることが出来るわけです。現行法とほぼ同じなので、これについて問題が起こるのなら、すでに起こっていなければならないはずですよね?

次に、「家宅捜索」と「押収」ですが、これは刑事訴訟法第9章(第99条〜第127条)で示されるとおり、司法(警察など)の用語です。人権委員会は行政府ですので、「立ち入り調査」と「提出要求」という用語が正しいのです。詳しくは後にまとめて説明するので、まずは語句の説明を終わらせたいと思います。

3つ目は、「罰金」ですが、「罰金」とは刑法第9条で定義されたもので、刑事罰の一種です。人権委員会は行政府ですので、行政罰の「過料」という用語が正しいです。(刑事罰の「科料」と行政罰の「過料」は異なるものです)

この時点で間違われると、行政と司法の違いを知っている人に「聞く耳を持ってもらえない」ことがあるので注意が必要です。同じ理由で「逮捕される」という反論も間違いです。

さて、次はこの立ち入り調査がどういう位置づけか、などにお答えしていきます。

罰則というものは実は2種類あり、刑事裁判によって決定され拘束力のある『刑事罰』、と行政機関が法律(行政法)に従って義務違反者に対して加える『行政罰』に別れます。

人権委員会は行政府に属するのでこの場合は「行政罰」になります。

たびたび前置きとしておいていますが、「運用に関すること」は後で説明しますので、ここでは「強制力のある行政罰が妥当かどうか」を考えていきます。

行政罰の具体例は、最初の方で「交通違反の切符」や「業務停止命令」を挙げました。

ここで、ある人物Aが一般救済では手に負えない人権侵害を行ったと仮定して、特別救済が図られたとします。

人権擁護委員が調べていた「一般救済」での調査と違い、「特別救済」では人権委員会が人権を侵害したと疑われる人に対して「任意調査」を依頼することになります。そしてこの条文。

 

第八十八条
 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の過料に処する。
 一 正当な理由なく、第四十四条第一項第一号の規定による処分に違反して出頭せず、又は陳述をしなかった者
 二 正当な理由なく、第四十四条第一項第二号の規定による処分に違反して文書その他の物件を提出しなかった者
 三 正当な理由なく、第四十四条第一項第三号の規定による処分に違反して立入検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
 四 正当な理由なく、第五十一条の規定による出頭の求めに応じなかった者

 

裁判所の発する令状がないということは、強制的に調査することはできないということです。拒否すれば、調査協力も資料提供もする必要はありません。ただこれは、調査される側に後ろめたいことがあり、なんでも拒絶ということが十分想定されるので、「正当な理由」を求めているに過ぎないのです。なお、罰則覚悟ならすべての調査協力要請を拒絶できます。

「正当な理由」が主観ではないか、とおっしゃる方がいると思いますが、もう何度も出てきましたように、「主観で書かれることが普通にある」ことを回答とさせていただきます。もし心配でしたら、総務省の法令データ提供システムhttp://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxsearch.cgi)にて「正当な理由」などを調べていただけるといいでしょう。軽く1000件以上出てくるはずです。

このときの判断は社会常識の枠内で行われるもので、もはや運用者の問題です。というわけで、「正当な理由」の判断につきましては、後に「運用者の問題」についての項目がございますので、そちらで説明させていただきます。

次に、「令状なしで『実質強制的な』調査をしてもいいのか?」という問題ですが、これはすでにある公正取引委員会の根拠となる独占禁止法から回答を得ます。

 

私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)

第四十七条  公正取引委員会は、事件について必要な調査をするため、次に掲げる処分をすることができる。

  一  事件関係人又は参考人に出頭を命じて審尋し、又はこれらの者から意見若しくは報告を徴すること。

  二  鑑定人に出頭を命じて鑑定させること。

  三  帳簿書類その他の物件の所持者に対し、当該物件の提出を命じ、又は提出物件を留めて置くこと。

  四  事件関係人の営業所その他必要な場所に立ち入り、業務及び財産の状況、帳簿書類その他の物件を検査すること。

 2  公正取引委員会が相当と認めるときは、政令で定めるところにより、公正取引委員会の職員を審査官に指定し、前項の処分をさせることができる。

 3  前項の規定により職員に立入検査をさせる場合においては、これに身分を示す証明書を携帯させ、関係者に提示させなければならない。

 4  第一項の規定による処分の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

 

また、国税徴収法第141条〜第147条を、先程ご紹介した法令データ提供システムで検索してみてください。見た瞬間笑いが止まらなくなります。

なんと言っても「捜索」が出来てしまうのですよね。これは、徴収職員に自力執行権(何らかの権利を侵害された者が、司法手続によらず実力をもって権利回復をはたすこと。なお、私人間には認められていない)の一環として認められているもので、令状なしで職員が判断すればいつでも出来るものだったりします。

補足:行政罰には行政刑罰と行政上の秩序罰の2種類があります。懲役や罰金は行政刑罰(独占禁止法第90条など)。人権擁護法案での過料は行政上の秩序罰です。

ここで、「行政府が令状を取らずに行う『実質的な強制力』のある調査をしてもいいのか、違憲ではないのか?」という意見に対する回答ですが、昭和41年12月27日最高裁大法廷決定第20巻10号2279頁)を裁判所HP(http://www.courts.go.jp/)の判例検索システムを利用して調べてみますと、「民事上の秩序罰としての過料を科する作用は、国家のいわゆる後見的民事監督の作用であり、その実質においては、一種の行政処分としての性質を有するものであるから、必ずしも裁判所がこれを科することを憲法上の要件とするものではなく、行政庁がこれを科する(地方自治法一四九条三号、二五五条の二参照)ことにしても、なんら違憲とすべき理由はない。従つて、法律上、裁判所がこれを科することにしている場合でも、過料を科する作用は、もともと純然たる訴訟事件としての性質の認められる刑事制裁を科する作用とは異なるのであるから、憲法八二条、三二条の定めるところにより、公開の法廷における対審及び判決によつて行なわれなければならないものではない」とされ、間接的心理的な強制は直接的物理的な強制と同視する程度ではないことから、違憲ではないとなっています。

つまり、「実質的な強制=間接的心理的な強制」は、令状なしに行われても合憲であると最高裁が認めているということです。

あとよく誤解されることですが、「人権侵害を行ったから30万円以下の過料」ではなく、「調査に正当な理由もなく拒否したから30万円以下の過料」なのです。この場合は人権侵害の真偽に関わらず、「調査に正当な理由による拒否を除き協力したか」が基準となります。よって、仲裁や調停で解決しようが、勧告を受け入れて公表されずにすもうが、抗告が成立して行政処分が取り消されようが、調査段階で発生した過料は発生します。逆に、過料を不服として行政事件訴訟法により抗告して裁判所に「正当な理由」だと認められれば、人権侵害を実際に起こしていたとしても過料は取り消されます

なお、「人権委員会が行うのは『処分』ではないから当てはまらない」という意見も、行政事件訴訟法第3条第2項に「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(同法同条第3項に規定する行為を除く)を単に『処分』という」と書かれていることから、人権委員会の加える行政処分も、同法の「処分」に当たります。

運用者の判断(正当な理由)は、また後ほど説明しますので、今回は省略です。

 

 

誤解17.政府が秘密裏に可決しようとしている。不安だ。

 

秘密裏ならどうやって「可決しようとしている」と知ったのですかと小一時間(ry

確かに、この法案は一般的な認知度は低いといっていいでしょう。前回国会に提出され、郵政解散で流れたのが平成15年。次に俎上に上がったのが平成17年。そして現在、内閣提出に向けて法務省と与党の間で意見調整……ん?

……そうです。現在、与党(と言っても、ほとんど自民党)で話し合われているのです。本来ならこれだけで納得していただきたいのですが……一応説明いたします。

現在の状況は、政党内でどんな法案を出そうか、という話し合いですので、そもそも公開する必要がないのです。この中に、民主党や共産党などの他の政党で党内の意見をまとめている段階の法案を見ることの出来る一般人がいたら、私のところに来なさい、以上! という話です。(前回の動画で使用した法案および法務省の示したアウトラインは、人権擁護法案を考える市民の会様、および平成徒然解体新書【堕天使の槍】様にて知り、確認に太田誠一議員事務所様に問い合わせいたしました。なお、現在の法案の詳細な内容は、法務省に聞くようにとのことでした。ちなみに、平成17年4月8日時点での法案内容は、法務省が出したものであるので確実といえます)

まぁ、ですがこれで終わるのもなんですので、仮に国会に提出されていたとしたら、ということを考えましょう。平成15年のときの騒ぎでは、そういう状況でしたし。

ここで皆さんは、一年間にどれほどの法案が国会で審議されていか、考えてみてください。

…………。

………。

……。

……ためしに衆議院のHPで、第169回国会(常会)で審議されている法案・条約、予算案等を見てみましょう。

人身取引等の防止及び人身取引等の被害者の保護に関する法律案

牛海綿状脳症対策特別措置法の一部を改正する法律案

輸入牛肉に係る情報の管理及び伝達に関する特別措置法案

道路交通法の一部を改正する法律案

永住外国人に対する地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権の付与に関する法律案

刑事訴訟法の一部を改正する法律案

臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案

臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案

消費生活用製品等及び特定生活関連物品に係る危険情報の提供の促進等に関する法律案

国立国会図書館法の一部を改正する法律案

民法の一部を改正する法律案

公職選挙法等の一部を改正する法律案

学校教育法の一部を改正する法律案

交通基本法案

電気通信事業法の一部を改正する法律案

地方公務員法及び地方独立行政法人法の一部を改正する法律案

環境健康被害者等救済基本法案

地方公務員法及び地方独立行政法人法の一部を改正する法律案

入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律及び刑法の一部を改正する法律案

私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案

地方公共団体の議会の議員及び長の選挙に係る電磁的記録式投票機を用いて行う投票方法等の特例に関する法律及び最高裁判所裁判官国民審査法の一部を改正する法律案

債権管理回収業に関する特別措置法の一部を改正する法律案

宇宙基本法案

非自然死体の死因等の究明の適正な実施に関する法律案

法医科学研究所設置法案

公立の小中学校等における地震防災上改築又は補強を要する校舎等の整備の促進に関する臨時措置法案

国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案

肝炎対策基本法案

有明海及び八代海を再生するための特別措置に関する法律の一部を改正する法律案

児童扶養手当法の一部を改正する法律案

臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案

原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律の一部を改正する法律案

介護労働者の人材確保に関する特別措置法案

国民生活等の混乱を回避し、予算の円滑な執行等に資するための租税特別措置法の一部を改正する法律案

国民生活等の混乱を回避し、予算の円滑な執行等に資するための関税暫定措置法の一部を改正する法律案

国民生活等の混乱を回避し、地方団体における予算の円滑な執行等に資するための地方税法の一部を改正する法律案

オウム真理教犯罪被害者等を救済するための給付金の支給に関する法律案

あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律等の一部を改正する法律案

後期高齢者医療制度を廃止する等医療に係る高齢者の負担の増加を回避する等のための健康保険法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案

国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案

障害者自立支援法及び児童福祉法の一部を改正する法律案

特定肝炎対策緊急措置法案

農業者戸別所得補償法案

日本郵政株式会社、郵便貯金銀行及び郵便保険会社の株式の処分の停止等に関する法律案

刑事訴訟法の一部を改正する法律案

土壌汚染対策法の一部を改正する法律案

国際的なテロリズムの防止及び根絶のためのアフガニスタン復興支援等に関する特別措置法案

揮発油税等の税率の特例の廃止、道路特定財源諸税の一般財源化及び地方公共団体の一般財源の確保のための関係法律の一部を改正する等の法律案

所得税法等の一部を改正する法律案

租税特別措置法の一部を改正する法律案

犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案

労働基準法の一部を改正する法律案

被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案

地方公務員法及び地方独立行政法人法の一部を改正する法律案

地方交付税法等の一部を改正する法律案

平成二十年度における公債の発行の特例に関する法律案

所得税法等の一部を改正する法律案

道路整備費の財源等の特例に関する法律の一部を改正する法律案

地方税法等の一部を改正する法律案

地方法人特別税等に関する暫定措置法案

地方交付税法等の一部を改正する法律案

関税定率法等の一部を改正する法律案

国民年金法等の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案

国土交通省設置法等の一部を改正する法律案

観光圏の整備による観光旅客の来訪及び滞在の促進に関する法律案

地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律案

地域公共交通の活性化及び再生に関する法律の一部を改正する法律案

株式会社地域力再生機構法案

犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律の一部を改正する法律案

裁判所職員定員法の一部を改正する法律案

電子情報処理組織による税関手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律案

国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案

公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の一部を改正する法律案

戦没者の父母等に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案

駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案

独立行政法人緑資源機構法を廃止する法律案

生糸の輸入に係る調整等に関する法律を廃止する法律案

水産加工業施設改良資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案

特許法等の一部を改正する法律案

公害健康被害の補償等に関する法律の一部を改正する法律案

地域再生法の一部を改正する法律案

構造改革特別区域法の一部を改正する法律案

電波法の一部を改正する法律案

犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律及び総合法律支援法の一部を改正する法律案

在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律及び検疫法の一部を改正する法律案

中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律案

海上運送法及び船員法の一部を改正する法律案

港湾法の一部を改正する法律案

防衛省設置法等の一部を改正する法律案

平成二十年度における政府等が管掌する健康保険の事業に係る国庫補助額の特例及び健康保険組合等による支援の特例措置等に関する法律案

森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法案

中小企業者と農林漁業者との連携による事業活動の促進に関する法律案

企業立地の促進等による地域における産業集積の形成及び活性化に関する法律の一部を改正する法律案

農林漁業有機物資源のバイオ燃料の原材料としての利用の促進に関する法律案

食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法の一部を改正する法律案

独立行政法人日本原子力研究開発機構法の一部を改正する法律案

長期優良住宅の普及の促進に関する法律案

独立行政法人気象研究所法案

暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の一部を改正する法律案

領海等における外国船舶の航行に関する法律案

インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律の一部を改正する法律案

特定電子メールの送信の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案

独立行政法人統計センター法の一部を改正する法律案

社会教育法等の一部を改正する法律案

学校保健法等の一部を改正する法律案

高度専門医療に関する研究等を行う独立行政法人に関する法律案

信用保証協会法の一部を改正する法律案

中小企業信用保険法の一部を改正する法律案

中小企業金融公庫法の一部を改正する法律案

独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案

消費者契約法等の一部を改正する法律案

金融商品取引法等の一部を改正する法律案

児童福祉法等の一部を改正する法律案

エネルギーの使用の合理化に関する法律の一部を改正する法律案

揮発油等の品質の確保等に関する法律の一部を改正する法律案

消防法及び消防組織法の一部を改正する法律案

愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律案

保険法案

保険法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案

介護保険法及び老人福祉法の一部を改正する法律案

少年法の一部を改正する法律案

障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案

特定商取引に関する法律及び割賦販売法の一部を改正する法律案

空港整備法及び航空法の一部を改正する法律案

地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案

平成十九年度一般会計補正予算(第1号)

平成十九年度一般会計補正予算(第1号)

平成十九年度特別会計補正予算(特第1号)

平成十九年度特別会計補正予算(特第1号)

平成十九年度政府関係機関補正予算(機第1号)

平成十九年度政府関係機関補正予算(機第1号)

平成二十年度一般会計予算

平成二十年度特別会計予算

平成二十年度政府関係機関予算

経済上の連携に関する日本国とブルネイ・ダルサラーム国との間の協定の締結について承認を求めるの件

経済上の連携に関する日本国とインドネシア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とカンボジア王国との間の協定の締結について承認を求めるの件

日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件

投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とラオス人民民主共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定の譲許表第三十八表(日本国の譲許表)の修正及び訂正に関する二千八年一月二十二日に作成された確認書の締結について承認を求めるの件

国際物品売買契約に関する国際連合条約の締結について承認を求めるの件

東南アジア諸国連合貿易投資観光促進センターを設立する協定の改正の受諾について承認を求めるの件

全権委員会議(千九百九十四年京都、千九百九十八年ミネアポリス及び二千二年マラケシュ)において改正された国際電気通信連合憲章(千九百九十二年ジュネーブ)を改正する文書(全権委員会議(二千六年アンタルヤ)において採択された改正)及び全権委員会議(千九百九十四年京都、千九百九十八年ミネアポリス及び二千二年マラケシュ)において改正された国際電気通信連合条約(千九百九十二年ジュネーブ)を改正する文書(全権委員会議(二千六年アンタルヤ)において採択された改正)の締結について承認を求めるの件

千九百四十九年のアメリカ合衆国とコスタリカ共和国との間の条約によって設置された全米熱帯まぐろ類委員会の強化のための条約(アンティグア条約)の締結について承認を求めるの件

社会保障に関する日本国とオランダ王国との間の協定の締結について承認を求めるの件

社会保障に関する日本国とチェコ共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

刑事に関する共助に関する日本国と中華人民共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件

所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とオーストラリアとの間の条約の締結について承認を求めるの件

所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とパキスタン・イスラム共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件

放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件

平成十八年度一般会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(その1)

平成十八年度特別会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(その1)

平成十八年度特別会計予算総則第十二条に基づく経費増額総調書及び各省各庁所管経費増額調書(その1)

平成十八年度一般会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(その2)

平成十八年度特別会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(その2)

平成十八年度一般会計歳入歳出決算

平成十八年度特別会計歳入歳出決算

平成十八年度国税収納金整理資金受払計算書

平成十八年度政府関係機関決算書

平成十八年度国有財産増減及び現在額総計算書

平成十八年度国有財産無償貸付状況総計算書

日本放送協会平成十七年度財産目録、貸借対照表及び損益計算書

日本放送協会平成十八年度財産目録、貸借対照表及び損益計算書

 

ええ……かなりの量ですね。その数164となっております。法案のみでも126あったりします。平均すると、およそ150の法案等が両院で審議されていることになります。

えー、この法案全てを網羅している人がいたら、私のところへ(ry

これだけの法案があるのですから、ひとつの法案だけを論って言うのは、どうかと思います。なお、これらは全て国会図書館や衆議院のHP・法務省HP(一部)で公開されていますので、一般の方々でも容易に知ることが出来てしまうわけです。

そして、「マスコミが報道しないから問題だ」という人もいますが、逆にお聞きします。「マスコミが報道しないと、あなたは知ることができないのですか?」と。

マスコミが唯一の情報源だというほうが、危険だと思います。もしそうなら、一私企業であるマスコミが、いくらでも情報操作しまくれます。

情報は、能動的に集めるもので、人から与えられるものではない」のです。マスコミが報道しないからといっても、インターネットなど知る手段はいくらでもあります。それを怠って「私は知らない」と言っても、それは個人の怠惰に他なりません。

それに、マスコミが報道しないのは、マスコミの問題であって、法案の問題ではないです。もしマスコミが報道しないことが悪いことの基準ならば、いったい年にどれだけの悪法が国会を通過しているのでしょうね。(なお、マスコミは産経を筆頭に報道しています)

……というか、よく「可決されそうになっている」といわれますが、一体何に可決されるというのでしょうかね。法律として機能するには、基本的に両院の可決が必要なのですが、現状自民党内の反対派のおかげで議論がまとまらず、国会提出すら危ぶまれているのですがね……。太田誠一議員事務所の方によりますと、「もう実質白紙から検討しています」と言われるレベルなのですが。反対派の意見を大きく取り入れることにしているようです。

 

 

誤解18.外国の人権擁護法で実際に言論弾圧が起きている。日本でも起こる。

 

その「外国(情報によるとカナダと英国と韓国)」で施行されている法律と、日本の「人権擁護法案」の訳文がまったく同じになるのなら、日本でも問題が起こるでしょう。では、外国の法律を読めばいいという話ですが……ドイツ語講座などをやっている身で言うのも難ですが、私は英語の方はいつも赤点すれすれなくらい苦手ですので、カナダの例はわかりかねます。ですが、韓国の「国家人権委員会法」なら入手できましたので、ここでご紹介します。(入手先:人権・同和問題の解決様/http://homepage3.nifty.com/na-page/

まず、「人権侵害」の定義ですが……

…………。

……ありません。

マジで、見当たりません。日本の「人権擁護法案」にある第2条第3条に該当する部分が、いくら読んでも見つかりません。

「人権」の定義は他の条約等でなされているのですが、規制対象とする「人権侵害」を定義していないって……いくら法律の癖で他の場所に書いてあることはかかないとはいえ、取り締まる対象くらいは書くものなのですが……。

さらに、第28条に「人権委員会が人権侵害とみなせば人権侵害」を地で行くような文章が……。

日本の「人権擁護法案」は、人権侵害を認めるまでの手続きが明記されていますし、アウトラインも示され、問題が起こるとすれば人権委員会の運用の問題くらいになっているのですが……韓国の国家人権委員会法では、そうなっていないようです。

残念ですが、韓国の事例を出して日本の「人権擁護法案」を非難することはできないと思われます。

他の国の事例ですが、カナダ・英国は前述の理由でわかりません。ですが、起こった問題を見ていますと、日本の「人権擁護法案」の運用面以外では起こらない事例ばかりでして、引き合いに出すのもどうかと思うのですが……これに関しては私が不勉強なため確定的なことは言えません。

 

 

誤解19.1.金正日を批判したら人権侵害と言われる。

誤解19.2.創価学会を批判したら人権侵害と言われる。

誤解19.3.外国人参政権反対と言ったら人権侵害と言われる。

誤解19.4.全ての批判が封じられ、言論弾圧される。

誤解19.5.2chやブログなどインターネットで言論統制がはかられる。

 

えー……何と言いますか……^^;

とりあえず、「言論の規制」を問題にしているので、強制力のある措置である「特別救済」の項目を見てみましょう。

……なのですが、ここで、皆様に謝らねばならないことがあります。

実は、元動画の方で、特別救済の大本である人権擁護法案第44条の引用を忘れてしまいまして……。なにぶん、元動画の文章、原稿用紙70枚近くありまして、うっかり入れ忘れたようです(そして気付かずupload…)。

気を取り直して、法案第44条をどうぞ。

 

第四十四条 人権委員会は、第四十二条第一項第一号から第三号までに規定する人権侵害(同項第一号中第三条第一項第一号ハに規定する不当な差別的取扱い及び第四十二条第一項第二号中労働者に対する職場における不当な差別的言動等を除く。)又は前条に規定する行為(以下この項において「当該人権侵害等」という。)に係る事件について必要な調査をするため、次に掲げる処分をすることができる。

   事件の関係者に出頭を求め、質問すること。

   当該人権侵害等に関係のある文書その他の物件の所持人に対し、その提出を求め、又は提出された文書その他の物件を留め置くこと。

   当該人権侵害等が現に行われ、又は行われた疑いがあると認める場所に立ち入り、文書その他の物件を検査し、又は関係者に質問すること。

 人権委員会は、委員又は事務局の職員に、前項の処分を行わせることができる。

 前項の規定により人権委員会の委員又は事務局の職員に立入検査をさせる場合においては、当該委員又は職員に身分を示す証明書を携帯させ、関係者に提示させなければならない。

 第一項の規定による処分の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

 

これに、第3条、第42条以下の特別救済の該当部が全て関わってきます。ですので、ブログにある元動画のテキスト、法務省HPにある平成15年版人権擁護法案原文を見比べながら引き続き見ていただければ、と思います。一応、特別救済にいたる手続きの条件を以下に書き出しましたので、そちらだけを見てくださってもいいと思います。(できれば条文で納得してくださったほうがいいですが)

なお、この内容もブログにテキストとしてアップすることにします。

 

認知・判断段階 「人種等」→第3条

 1−@ 人権救済の申立(人権侵害された、されるに足る合理的証拠がある)があったか?【第38条】

    ない→不開始

 1−A 当該事例から1年経っていないか?【第38条】

    一年以上経過→不開始

 1−B 特定の者の「人種等」を理由とする差別的な「言動」があったか?【第3条・第38条・アウトライン】

    特定の者(「人種等」の規定があるのでこの場合は個人)でない→不開始

    :特定の「集団」であっても「取り扱い(=待遇)」であれば開始

 1−C 歴史的・学術的・宗教的な判断をしなければならない事例か?【アウトライン】

    判断しなければ言えない→不開始

 1−D 特定の法律が違憲であることが前提になっていないか?【アウトライン】

    違憲前提である→不開始

 1−E 明らかに行政や立法の裁量でないか?【アウトライン】

    行政や立法の裁量である→不開始

 1−F 常識的な議論による資料の提示や論評にあたるか?【アウトライン】

    議論上必要な事例である→不開始

 1−G 国会の議決によるものであるか?【アウトライン】

    国会の議決である→不開始

 1−H 裁判で決着がついていないか?【アウトライン】

    決着がついた事例である→不開始

 1−I 不当な利益を得る(エセ人権団体の恫喝等)ではないか?【アウトライン】

    不当な利益を得る行為である→不開始

 1−J 特定の団体の運動思想を喧伝する目的ではないか?【アウトライン】

    思想の宣伝目的である→不開始

 1−K 特定の者の社会的評価を貶める目的でないか?【アウトライン】

    特定の者を貶める行為である→不開始

 1−L その他、常識的に考えておかしい申立でないか?【アウトライン】

    どうみても変です→不開始

一般救済手続

 調査する人:人権委員会委員・事務局職員・人権擁護委員

 2−@証拠は適法に収集されたものか?【アウトライン】

    違法に集めた(盗撮等)ものである→証拠棄却

 2−A証拠は風評の伝やマスコミの報道内容ではないか?【アウトライン】

    噂やマスコミの報道だった→証拠棄却

 2−B部外者が見ても正しいと思うほどちゃんとした証拠が十分集められたか?【アウトライン】

    証拠が集まらない→手続終了

 《分岐》上記全てをクリアし、かつ「特別救済手続」の条件に当てはまらない【第42条】

    犯罪に当たらない→『相談に乗る』『関係団体を紹介する』『加害者等へ指導する』『両者の調整』『行政機関への通告』

    犯罪に当たる→『告発』

---------------ここまで現行法(人権擁護委員法等)と同じく強制性なし---------------

特別救済手続

 3−@ 公務員(とそれに準じる公的な職員)が業務上で「人種等」を理由に差別的な待遇や言動をしたのか?【第42条】

 3−A 商売を行う者が業務上で「人種等」を理由に差別的な待遇や言動をしたのか?【第42条】

 3−B 役職が上の者が権力をちらつかせたセクハラをしたか?【第42条】

 3−C 虐待をしたのか?【第42条】

 3−D 上4つに準じる場合で、被害者の立場が自力で回復困難なくらい弱いか?【第42条】

 3−E 「人種等」の属性を持つ集団を、公務員や商売人が差別的待遇をすることを助長または誘発させる「目的で」、それが目に触れれば特定の集団が被差別属性を持つとわかってしまうような情報を、不特定多数の目に触れるようにする行為をしたのか?(現状当てはまるものは『部落知名総鑑』の販売行為のみ)【第43条第1号・第3条】

 3−F 差別的待遇をする意思を示す広告を出していないか?(正当な理由のない「外国人お断り」など)【第43条第2号・第3条】

    この7つのどれも満たさない→一般救済

 調査する人:人権委員会委員・事務局職員(人権擁護委員は対象外)

 3−G 供述内容は、供述書又は供述調書によるものであるか?【アウトライン】

    供述書または供述調書に書いていない→証拠棄却

 3−H 仲裁を受け入れたか?【公示催告手続及ビ仲裁手続ニ関スル法律】

    仲裁案受け入れ→解決

    どちらかが拒否または交渉決裂→下の項目へ

 3−I 調停を受け入れたか?【第五十条】

    調停案受け入れ→解決

    交渉決裂→勧告へ

 3−J 人権侵害したとされた者に弁明や反論の機会はあったか?【アウトライン・第60条】

    なかった→弁明や反論をさせる

 3−K 勧告が受け入れられたか?【第60条・第61条】

    受諾した→解決

 3−L 勧告前に双方の話し合いの場はあったか?【第61条】

    なかった→双方の意見を聞く

 3−M 人権侵害したとされた者からの抗告は棄却されたか?【行政事件訴訟法第2章】

    抗告が成立した→勧告取り消し

 3−N 上記の全てを満たすものか?

    →勧告の内容を公表する

 

……まとめたつもりなのですが、非常に長い手順を経て公表段階までいたるようになっています。

さて、これにしたがって、誤解を解いていきましょう。

まず、「金正日を批判したら人権侵害」ですが……まぁ、普通は何かをもって批判するので、拉致問題としておきます。「金正日は拉致をした」と言いましょう。

このとき、1−Aまでは成立しますが、1−Bにて、拉致をしたことの批判であって「人種等」を理由にしているわけではないので、人権侵害には当たらないことになります。

では、「強制連行は嘘だといわれた。人権侵害だ」ではどうでしょうか。

同じく、1−Aまでは成立しますが、「特定の者に対する」言動ではないので、人権侵害には当たりません。また、仮に1−Aをクリアするようなものでも、1−Cで歴史的な真偽の「判断を」しなければならないので、人権侵害には当たりません。これは、彼らにとって「歴史的事実」だったとしても、その「判断」を行った時点で不開始事由に当たるということです。ここを勘違いしている人が前回多く見受けられました。

次に、「創価学会を批判したら人権侵害と言われる」ですが……これももう少し具体的にしないとつかめないので、私がいつも言っている「創価学会は公明党という政治団体を実質的に持っているので、憲法第20条の規定に反するかもしれない」としましょう。この場合、1−Bの「特定の者」に対する言動の項目で引っかかり、人権侵害には当たらないことになります。また、「何某という創価学会員は、悪質な勧誘をした」ということも、「特定の者」に対する言動なので1−Bをクリアしそうですが、「人種等」で批判しない限り人権侵害には当たりません。「人種等」には「信条」が含まれるから、人権侵害といわれるということを言っている方もいましたが、この場合は「悪質な勧誘をした」とこで批判されているので、決して「人種等」によって批判されているわけではないので人権侵害ではないという判断になります。

ただ、「何某は創価信者だから死ぬべきだ」という言動は、「人種等」を対象として「特定の者」への言動ですので、1−Bをクリアします。1−Cも、「宗教の教義」に関する判断をしなくても「死ぬべきだ」と言っているので通過して、以下同じように適用され、一般救済手続に至ります。このときの証拠が皆信用するに値するとして、3−@から3−Fに引っかかるかということになりますが、ここで引っかかります。言った人間が公務員や商売人の業務において「差別的取り扱いをした」わけでもなく、セクハラでもありません。

というわけで、こんなに酷い発言ですら、人権侵害にはなっても一般救済止まりいうことになります。(そもそも、創価学会員であることだけでは、信教の自由のある我が国においては批判できないはずです。それでも批判するのですから、「一般救済」で済んだだけマシと考えるべきでしょう)

売国奴リストも人権侵害だといわれる」というものもありましたが(リストを詳しくらない私は憶測でしか語れませんが)、そのリストが「人種等」の被差別属性を以ってして書かれたものであるならば対象になるかもしれません。しかし「売国奴」という以上、「国を売るような言動を行った」ことを対象とするはずです。そうですよね。同じ在日朝鮮人や元在日の帰化人の方でも元プロレスラーの前田日明氏を売国奴と誹る人はいないでしょう。というわけで、これも人権侵害には当てはまりません。

また、「外国人参政権反対と言ったら人権侵害と言われる」というものも、当てはまりません。当てはまるという方は、主に第43条について言及し、「外国人参政権反対」というのは「外国人差別を助長する」と言われる、としているようです。ですが、ここで「外国人参政権反対」とは、誰に言っているものかを考えてみてください。外国人に対して言っているのではなく、現在の政治家に向けて言っているものですよね(でないと成り立たない)。それに、これは明らかに立法の裁量です。よって、3−Eにいたる以前に、判断段階で不開始とされます。仮に3−Eに至ったとしても、「外国人参政権反対」という情報が、それが目に触れれば特定の集団が被差別属性を持つとわかってしまうような情報には明らかに当たらないため(外国人だと見ればわかる際はこの情報とは無関係ですし、東アジアの日本人と区別つかないような外国人の場合も「外国人参政権反対」の文章のみで日本人と区別することはできないから)、ここでも棄却されます。

刺青のある人お断り」という看板を掲げるのはどうか、という意見もあります。現在、「刺青(一般的に言われる“タトゥー”の領域で収まらない大げさなもの)は“や”のつく自営業の印」と、一般的に広く認知されているもので、それ自体が反社会性のあるとみなされるものなので、現状では人権侵害に当たりません。(これは「人種等」の信条に入れていいものか非常に難しい問題であります。現状の社会通念を考えますと、信条には入りませんが、今後どうなるかは国民次第です)

部屋の壁を勝手にピンク色にした韓国人相手に、もう部屋を借りないでくれ」と言っても、もちろん差別にあたりません。なぜなら、「人種等」を理由にしているのではなく、「部屋の壁を無許可でピンク色にした」ことが貸さない理由となるからです。

このように、直接の原因が何であるかを考え、その対処として行った取り扱い、それに対する言動はほぼ間違いなくはじかれるようになっています

「言論弾圧だ」「表現の自由がなくなる」とは、具体的にどのような事例を指して言っているのかによるのですが、現行法においても違法なもの以外は通常の言論活動に支障をきたす事態には、まずならないことが十分予測できます。(また、この言葉尻を捕らえて「曖昧だ」とか仰る方もいるでしょうが、運用面のことがありまして100%を確約できないからです。また100%を安易に口にしないのは科学的誠実さですから、仕方のないことです)

以上のように、現行法で違法なものくらいしか条件として当てはまらないということが、ご理解いただけたでしょうか。では、現行法でいいじゃないか、と仰られるかもしれませんが、こういったことは摘発が非常に難しいので、ADRを設けて相談窓口を増やすことは非常に有益だということもご理解いただきたいです。

また最近、これに関係しそうな興味深い判決が東京地裁でありましたので、ご紹介いたします。(情報元:産経新聞2月29日)

 

「カルト団体の母体だ」HP書き込みで批判 男性に無罪 東京地裁

ラーメンチェーンを経営する企業がカルト団体と関係があるかのような書き込みをインターネットのホームページで掲載し、企業の名誉を傷つけたとして、名誉毀損罪に問われた会社員の男性被告(36)の判決公判が29日、東京地裁で開かれた。波床昌則裁判長は、「名誉毀損には当たらない」として、罰金30万円の求刑に対し、無罪を言い渡した。

波床裁判長は、まずインターネット上の書き込みに関して、名誉毀損罪が成立するか否かを検討。「ネットでは利用者が互いに反論できる上、情報の信頼性が低いため、従来の基準は当てはまらない」と指摘。

「真実でないと知りながら発信した場合か、インターネット個人利用者に要求される水準の事実確認を行わずに発信した場合に、名誉毀損罪が成立する」との新たな基準を示した。

(以下略)

 

嘘を嘘と見抜けない人は(ry」が、裁判所のお墨付きを貰った事例だったりします。この判決により、インターネットでの議論に「ネット上の情報は元々信頼性が低く、それを受け取る側の注意力も求められる」という新基準が生まれたわけです。この基準ももちろん、人権擁護法案が法律となった際に活用されるでしょう。

なお、この事件は民事によって賠償請求が成立していますが、これは「風評被害」の有無が問題となっているので、全く別次元の問題です。この場合には参考にならないでしょう。

このように、勧告の公表にいたる手続きは、普通に生活している上で全く無縁であるといえます。さらに、勧告の公表の際は、「人権侵害をしたとされた者の言い分」も共に公表されます公表にいたる条件が、これほどまでに厳しいので、この時点で勧告されるということは「相当な信念を持ってその言動または取り扱いをした」といえます。また、そういう人にとって、「自分の言い分を公開されること」はむしろ望むべきことであり、正直言って公表制度自体に抑止力があるのか、とも思わないことはないのですが……。制裁の意味で使われる公表制度自体に違法性はないので問題ないのでしょう。

 

 

誤解20.1.公明党が推進しているからダメだ。

誤解20.2.古賀議員が推進しているからダメだ。

 

こういう人は、我らが麻生さんが「日韓トンネル」を推進したら諸手を挙げて賛成し民主党の菅直人議員が「核保有するかという議論をしただけで封殺されるのはおかしい」と言っても非難するのでしょうか?

誰が何と言った、というのは参考程度にとどめるのがいいでしょう。重要なのはその論の内容です。誤解2などでも言いましたが、あのいつも冷静で教養もある櫻井女史でさえ誤解することはあるのです。

 

 

誤解21.言葉狩りを生む危険性がある。

 

誤解19で示された手順を踏むので、現行法と全く変わりない基準であると判断できます。

そして、現状で行われている言葉狩りは、総じて出版社の自主規制であるので、この法案の有無に関わらず起こることです。この法案の問題点とは言えません

 

 

誤解22.1.人権擁護委員が暴走するかもしれない。

誤解22.2.人権委員会が暴走するかもしれない。

誤解22.3.総理大臣が暴走するかもしれない。

誤解22.4.国会議員が暴走するかもしれない。

誤解22.5.国民が暴走するかもしれない。

 

お待たせしました。これまで散々待ってもらっていた、「運用者の問題点」についてお話いたします。

ですが……まぁ、民主主義がどのようなものか、人権委員会や人権擁護委員がどのようなプロセスで選ばれるかをご理解いただければ、自然と上記誤解が「前提条件を誤ったものだ」と結論付けられると思うのですが……一応ご説明いたしましょう。

まず、人権擁護委員ですが、人権擁護委員に適しない非行があったとき人権委員会によって解嘱されます。よって、人権委員会がまともな判断をするならば、人権擁護委員が暴走することはありません。あったとしても辞めさせることができます。

次に、人権委員会が暴走したらということを考えます。この法案では、人権委員会の委員長および委員に適しない非行があったとき総理大臣によって罷免することができます。よって、総理大臣がまともな判断をするならば、人権委員会が暴走することはありません。あったとしても辞めさせることができます。

さらに次に、総理大臣が暴走したらということを考えます(ここから法案の外の議論になります)。総理大臣がその職務らしい行動をしなかった場合、衆議院で内閣不信任案を採決すれば内閣を総辞職させることができます。または、衆院解散により国民に真を問う場合もあります。よって、国会(この場合は衆議院)がまともに機能していれば、総理大臣が暴走することはありません。あったとしても制度として辞めさせることができます。(なお、参院選や国民の声で総理を結果的に辞めさせることはできます。例:安倍前首相)

なんだか、すごく数学的帰納法を使いたい事例ですが、次です。

では、国会議員が暴走したら、ということを考えます。

国会議員は国民によって選挙で選ばれます。つまり、変な国会議員がいれば、選挙で落としてやればいいのです。よって、国民がまともな判断を下せば、国会議員が暴走することは制度上ないことになります。あったとしても、次の選挙で落とせばいいことです。

では、今度は国民が暴走したらということを考えてみます。

……ですが、この議論は意味を成しません。なんと言っても、民主主義の前提として「国民がまともな判断を下すことの出来る」ことが挙げられるからです。

民主制とは、主権に与る範囲が限定されず国家の構成員全員である場合の政治体制を指します。ちなみに、限定されてひとりである場合を独裁制といいます。

そして、どんな政治体制でも、主権者がまともな判断を下すことを前提として様々な制度が作られるのです。そうでないと、チェック機能が働きません。

そして「主権者」とは、乱暴に言ってしまうと「○○の任命責任は××にある」を繰り返していって、最終的にたどり着く人のことです。そして、直接民主制でも間接民主制でも、最終的に誰が責任を持つかを考えると、それは国民です

日本は、元動画でも言ったとおり立憲君主国です。つまり、君主の権限を憲法で縛り、国民から選ばれた議員によって選ばれた政府首班によって政治が運営されるわけです。このように、最終的な責任者は国民なのです。(実際、憲法の三大原則に「国民主権」が入っていますし)

民主主義であるには、公正な選挙制度の確立が条件ですから、日本はこれを満たしているといえます。「民主主義が完璧でない」ということを指摘する方がいましたが、何を持って「完璧でない」とするのか、私には理解できませんでした。日本はきちんと選挙によって国会議員を選んでいるのです。民主主義の条件には、「組織票」だとか「創価学会が」などという文言は必要ありません。ただ「正当な判断が出来る国民が選んだ」という事実のみが必要なのです

よって、「運用するものがやりたい放題したらどうなるのか?」ということに対しては、「国民が一人ひとり自分の力で考え、信頼するに足る人を選ぶように選挙に行くこと」という教科書的回答しかありえないのです。

この法案で起こると思われる問題は、私や反対論の人が指摘したものを除けば、運用者(最終的には責任者である国民)の良識にかかっているもの(それも、ぎりぎりまで条件を厳しくした)ばかりです。よって、こればかりは民主主義を我が国が採る以上、避けては通れない問題なのです。

法案だけじゃなくて現実を見ろ」という意見がありましたが、「現実問題としてこれ以上民意を反映させるシステムは、民主制をとる我が国において存在しない」のですから、この法案を非難する理由にはならないのです。我が国は法治主義と民主制の国家であり、国の制度は全てそれらが前提として作られているのです、それらの側面を無視して論を展開することこそ、現実や社会を見ていないと思います。

これでもなお「民主主義であるから問題だ」というのなら、それこそ革命でもクーデターでも起こして独裁政権を樹立してください。国民の目を信用できない、自分の目しか信用できない、というのなら、民主主義は語れないのです。

 

 

以上が、この法案に対する誤解に対する回答です。

まぁ、この辺りは単純に知らない内容だったり読み間違いだったりが原因と考えられるので、そこまで問題ではないのですが、最悪なのはデマを流すことです。これからは、よく目に付くデマについて話していこうと思います。

 

 

デマ1.人権擁護法案によってアニメ、漫画、ゲームがなくなる。または無味乾燥になる。

 

条文で根拠を示してください。この法案にはそのようなことは書かれていません。現在書店で普通に手に入る出版物では誤解19で示した条件をクリアするものなどありません。あれらの条件に合致するものは、現状では『部落地名総鑑』しかありません。

 

 

デマ2.この法案は治安維持法の再来だ。

 

お前は治安維持法言いたいだけちゃうんかと。治安維持法と同じであるならば、類似する条文を挙げて、かつ同じ状況になるといえる合理的根拠を示すべきです。

 

 

デマ3.人権委員会の行動を監視、抑制する機関が存在せず、委員会がやりたい放題できる。

 

人権侵害と認定して調査を開始するには、あらかじめ決められた厳しい手順が待っています。人権委員会がやりたい放題する可能性は、国民がまともである限りありえません

国民が信用できないというのでしたら、どうぞ革命でもクーデターでも起こして独裁政権を樹立してください

 

 

デマ4.表現の自由がなくなる。

 

まず、条文で示してください。人権侵害と認定して調査を開始するには、誤解19で示した手順を踏みます。現状の自由度となんら変わることはないでしょう。

 

 

……まぁ、こんな感じです。

正直、デマの類は視聴者や読者の不安を煽りたいだけで作られたように感じます。実際、条文に書いていない、またはよくある誤解では説明がつかないからです。

ここからは私の予想なので確証はありませんが……。このデマを最初に考えた人は、他の法律に明るくない人に対して恐怖心を植え付けるつもりで作ったのではないかと思うときがあるのです。「人は憎しみだけではなく、恐怖心に駆られても相手に危害を加えようとする」とマキァベリは言いましたが、まさにそれを利用したのかと。

ですが、根拠のない嘘はいずれバレます。バレたとき、嘘だと知らなかった人は、騙されていたことに対してどう思うでしょうか。

戦後、左巻きの連中に「憲法9条が日本を守っている」「非武装平和を」などと嘘を教え込まれ、それが嘘だと気付いたとき、皆さんはサヨクに対してどのような感情を抱いたでしょうか

デマを広めることは、その感情を人権擁護法案反対論に向けさせることに繋がるのです

「嘘を言っていた連中のいうことなんか信じられるか」という風にして。

以上のようなことを考えながら、この問題の総括をさせていただきます。

 

 

 

4.二分法による社会の単純化の問題(サヨク・ウヨクとニセ科学)

 

まず、コメントのご質問にお答えしようと思います。

 

質問:どうして反対派であるはずのうp主が反対派を批判しているのですか?

 

お答えします。

それは、デマを広められることが、反対派にとって迷惑以外の何者でもないからです。

私は、きちんと条文を読んで、考えられる事態を自分で考慮した反対論であれば、自分と違う意見でもなにも批判しません。むしろ、自分と違う視点からの意見なので、非常に有意義に活用させていただいております。

しかし、デマや誤解ではそうはいきません。

誤解は条文の中での読み違いなどで、これを根拠に反対論を展開しても、反対論が間違っていることになるからです。まだ救いなのは、誤解によって批判している方は、誤解が解ければ普通に正当な理由で反対してくれることです。

ですが、デマは元々が誤読とかそういうレベルではない全くのデタラメから出発している点で非常にたちが悪いです。

現在広まっているデマの類は、「小説や漫画がなくなる」とか「治安維持法」や「言論弾圧だ」などのセンセーショナルなものばかりです。それらは先程も指摘したとおり、人の恐怖心を煽ります。

ここで思い出してみてください。同じように人の恐怖心を煽るデマで「憲法を改正したら徴兵制がしかれて戦争に行かされる」というものもありましたね。現代戦がどのようなものか知っていれば、徴兵制がしかれることなどないと断言できるにもかかわらず、数年前まで多くの人がこの説を信じていました。

どうして、人権擁護法案におけるデマを信じている人は、左翼が嘘をついていたのなら、右翼だって嘘をつくかもしれないという可能性を考えないのでしょうか。

私には、デマによって反対論を展開する人と、憲法9条を盲信する人が重なって見えるのですが、いかがでしょうか?

また、デマを信じるあまり、それを指摘する人がたとえ同じ反対派であったとしても、全て「工作員」や「在日」、「創価」とレッテルを貼り、聞く耳を持たずに喚く様をみて、中立の人はどう思うでしょうか。

他にも、某創価学会員の有名人をこき下ろした動画や、韓国人が歌ったというだけで、その人が親日派でもチョン氏ね」というコメントする人さえいますね。

こういうものを、一般の方が見たら、どう思いますか?

「これこそが人権侵害か」と思ってしまいませんか?

反対派がデマを信じるあまり、「言論弾圧をするな」といいながら言論弾圧をする様を見て、他の人はどう思いますか?

これでは、自らの首を絞めているだけではないでしょうか。

私はこれを危惧しております。

 

さて、この問題はもっと根が深いような気がします。

同じような問題として、別の根拠のないデマをあげて見ましょう。

それは、「ゲームをすると脳の機能が壊れる」といういわゆるゲーム脳説です。小説などにもある物語性をもってゲームが人格形成に影響を与えるとか、単純作業による脳の機能低下(実際は慣れただけ)とかを根拠にでっち上げた教授がどこかにいましたよね。アレのことです。

常識的に考えればありえない「ゲーム脳説」も、「脳の機能が壊れる」などと恐怖心を煽ってどれだけの人に伝わったものでしょうか。

私には、これら全ての問題が、大阪大学の菊池誠教授の指摘するとおり、「ニセ科学は断言してくれる」「科学には、曖昧さなく物事に白黒つけるものというパブリック・イメージがある」という問題が根幹にあると思っています。

ニセ科学は自然科学の話ですが、社会科学においても同じことが言えるのではないか。そう考えたのです。

ある程度の曖昧さは、科学的誠実さだから仕方ないのです。

それを「曖昧と指摘する」のだから、「法律は曖昧さなどない」という思考が裏で働いているのでしょう。

 

この法案はいいのか、悪いのか。

憲法改正はいいのか、悪いのか。

マイナスイオンは身体にいいのか、悪いのか

世の中は、そんな単純な二分法では出来ていません。ある物事は、大抵いい面もあれば悪い面もあるのです。

 

その単純でない部分をきちんと考えていくことこそが、合理的思考であり、科学的思考なのです。二分法は思考停止に他なりません。ニセ科学に限らず、いいのか悪いのかという二分法的思考で結論だけを求める風潮が、社会に蔓延しつつあるように思います。そうではなく、私たちは合理的な思考のプロセス、それを大事にすべきなのです

 

同じく菊池教授の言から引用しました。

改めて、言います。

私は現状の法案には反対です。現状の法案のまま通させないためにも、反対派の人は理性を持つべきです。

理論武装なしに反対してはいけません。扶清滅洋を叫んで列強の軍に突っ込んでいくような無様な真似は避けるべきです。

まず、自分の意見を言うときは、「それは果たして自分で考えて至った結論なのか、誰かの意見を盲信していないか」と自問してください。

自分が知らない間に操り人形になっていないか、考えてみてください。

自分がデマに乗せられていないか考えてみてください。

 

ここまで、長い間見てくださった方なら、それが出来ると信じております。

今こそ、冷静に、法案の問題点を指摘して、反対論を展開していきましょう。

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